未来をつくる農とエネルギーの旅 2025年12月14日

相模原市緑区・旧藤野町。都市近郊でありながら豊かな自然が広がるこの中山間地域では、農業と再生可能エネルギーの共存、地域通貨による助け合いの経済、炭電池の開発、アフリカへのIT教育支援など、多様なSDGs実践が静かに、しかし力強く展開されています。

2025年12月14日、「未来をつくる農とエネルギーの旅~相模原SDGs実践ツアー~」が実施されました。ツアーには大学ゼミ生を中心に複数の参加者が集い、さがみはらSDGsアワード受賞団体を含む4つの拠点を実際に訪問。現場のキーパーソンたちから直接話を聞き、五感で学びを深めました。

本レポートでは、各訪問先の概要とともに、参加者たちが残した率直な声をお届けします。

01 さがみこベリーガーデン:ソーラーシェアリングという選択

さがみはらSDGsアワード2023 相模原市長賞受賞 / 山川勇一郎さま・小出竜士さま

耕作放棄地を再生し、ブルーベリー農園の上にソーラーパネルを高く設置する「ソーラーシェアリング」。農業と発電を一枚の土地で両立するこの仕組みは、相模原で初めて実現された先進的な取り組みです。東日本大震災をきっかけに地域エネルギーのあり方を問い直し、地域への電力還元や非常時の備えまで視野に入れた実践が、参加者に深い印象を与えました。採れたてのブルーベリージャムの試食も好評でした。

参加者の声

農地の上で太陽光を活用しながら農業とエネルギーを両立させるという発想に、環境への配慮だけでなく地域の未来を本気で考える姿勢を強く感じました。理想論だけでなく、現場で課題を一つひとつ乗り越えてきた経験談から多くの学びを得ることができました。大学2年生

ソーラーシェアリングなどの農業と再生可能エネルギーの結びつきによる活用の仕方を知り、自らがSDGsについて主体的に考え取り組む姿勢をもつことの重要性と将来性を感じました。大学2年生

環境によく、さらに地域に電力という形で還元できるという一石二鳥の方法。このような地球にやさしい産業を広げていくビジネスを将来的に行っていきたいと考えました。大学3年生

02 藤野倶楽部・百笑の台所:農的な暮らしを体感する場所

農業法人 藤野倶楽部 / 桑原敏勝さま

無農薬・有機栽培の野菜づくり、農園レストラン「百笑の台所」、そして施設の電力をまかなうソーラー発電。藤野倶楽部は「農的な暮らし」を丸ごと体験できる場です。ランチでは地元産の野菜を使った料理が振る舞われ、ジャズ演奏が流れる中で、地域の人々と観光客が自然に交わる温もりある空間が生まれていました。歯科技工士からの転身という桑原さんの人生経路と、信念に基づく行動力が参加者の心に響きました。

参加者の声

「観光地としてではなく、まず住民が住みやすい町を作る」という言葉が印象的でした。ジャズ演奏を聴きながら食事を待つあの空間こそ、その言葉を体現していると思いました。農業を基盤とした地産地消は実際に成り立つのだと実感しました。大学4年生

元々は歯科技工士として働かれており、現在は全くの異業種に取り組まれていますが、自分自身の信念があれば分野は関係ないのだということを学ばせていただきました。大学4年生

 

03 藤野電力:電気を自らつくる  さがみはらSDGsアワード2022 相模原市長賞受賞 04 NPO Class for Everyone電気を届ける、学ぶ さがみはらSDGsアワード2022受賞

鈴木俊太郎さま/ 高濱宏至さま

「電気を自分たちでつくろう」を合言葉に活動する藤野電力と、アジア・アフリカの子どもたちにIT教育の機会を届けるNPO Class for Everyone。現在進行中の炭電池の開発は、身近な素材から持続可能なエネルギーを生み出す試みです。盗難を防ぐために移動式にしたソーラーパネル、直流・交流・アンペア・ワットといった基礎からのわかりやすい解説など、細部への工夫が「生きる力を育む」という活動の本質を伝えていました。

参加者の声

電気は誰かが作っているものや元からあるものだと思っていましたが、工夫次第では木炭などでも作れると聞いてとても感心しました。大学2年生

電気って当たり前になりがちで、あまり特別扱いされない商材ながら、電気から藤野を盛り上げる姿勢に感銘を受けました。初めてお目にかかる働き方で、働き方の概念がより自由度を増しました。大学3年生

炭が蓄電池になるという点は特に新鮮でした。身近なブレーカーが落ちる仕組みから直流・交流・アンペア・ワットといった基礎まで改めて学び直せ、電気について考え直す良いきっかけになりました。大学4年生  

05 森のイノベーションラボFUJINO 地域通貨「よろづ屋」とつながりの経済

森のイノベーションラボFUJINO / 高橋靖典さま

27のプロジェクトが動くSDGs拠点・森ラボの取り組みや、地域通貨「よろづ屋」の仕組みや地域コミュニティの取り組みが紹介されました。お金ではないつながりを生み出す仕組み、バグ村やコンポスト、子ども支援など、一見バラバラに見える活動が「何か良いことをしたい」という一本の軸でつながっています。都市部とは異なる大人の生き方・子どもの育ち方が、参加者それぞれの将来を考えるきっかけとなりました。

参加者の声

昔の日本で行われていたような物々交換や町全体での助け合いの文化が今の日本にあると思っていなかったので、楽しそうだなと思いました。将来余裕があったら藤野で地域おこしに参加してみたいです。大学2年生

藤野にいる方々のような、他の人々との関わりや助け合いを大切にする精神がある街は素敵だと思います。自分が社会人になって、どんな環境でどんな人と過ごしていくか、自分で考える良いきっかけになりました。大学4年生

REFLECTION

技術だけでなく、 人とのつながりが 持続可能な社会をつくる。

今回のツアーを通じて参加者が口を揃えたのは、「技術や仕組みの先に、人と人のつながりがある」という気づきでした。ソーラーシェアリングも、地域通貨も、炭電池の開発も——それらを支えているのは、地域への愛着と、仲間との信頼関係です。

藤野では、異業種からの転身者、移住者、学生、アーティスト、農家が同じ土地で互いを尊重しながら暮らしています。そこには、均質化した都市とは異なる、豊かな「多様性」がありました。

参加者たちはこの日の体験を、それぞれの学びや仕事、地域への関わり方へと持ち帰っていきました。

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