陣谷温泉

絶景が楽しめる陣馬山麓の温泉旅館でのんびり過ごす極上の時間を

県道から陣馬山登山口の細い道を入り、くねくね続く山道を登った先に現れる「陣谷温泉」。ほかに建物もなく、とても静かで、大自然の中に溶け込むように建つ秘境の旅館だ。

「陣谷温泉」は昭和40年創業。ここが地元だというオーナーの大木衛さんは、21歳のとき、鉱泉が出るこの場所で、47坪・3部屋の小さな温泉旅館を始めた。段々畑になっていた斜面を自ら造成し、石垣も自力で積んだという。旅行雑誌に紹介されるとたちまち評判を呼び、常に満室状態に。地元団体の宴会利用も多く、カラオケ設備を導入したり、宴会場や部屋の増築を行なうなど、忙しい日々が続いた。現在の部屋数は7部屋。ノスタルジー漂う和風の客室は、四季折々の景色を楽しみながらのんびり過ごせる空間になっている。冬はこたつがセットしてあるのも嬉しいポイントだ。

陣馬山麓にあるため、登山客の日帰り入浴の利用も多い。冷えた体を芯から温め、登山の疲れを癒してくれると、陣馬山登山の楽しみの一つにもなっている。浴槽は贅沢な檜風呂。崖の上にあり、一面ガラス張りの窓からは、遮るものが何もない山々の絶景を見渡すことができる。山の向こう側から猿が覗いていることもよくあるというから、目を凝らしてみるのも楽しいだろう。

宿泊客の多くも、この温泉と名物の猪鍋を目当てにやってくる。近年は高尾山から陣馬山に縦走してくる登山客や周辺観光の際の宿として利用する人も増えてきた。また、碁が趣味だったオーナーは、20年ほど前に囲碁ルームを新設。これだけの広さの囲碁ルームがある旅館はあまりなく、関東各地から多くの団体が囲碁合宿に訪れるようになった。「あれだけの会場をつくれば、碁の好きな人は自然と来てくれます」とオーナー。

温泉、宴会、カラオケ設備の導入、囲碁ルームと、時代に合わせて常に創意工夫をし、賑わいを生み出してきた衛さんは「仕事に対する努力をしていないと、ここまで出来なかったんじゃないかなと思います。努力したから60年以上もやってこられたのかなと」と振り返る。この唯一無二のロケーションに惹かれ、最近は雑誌の写真撮影やCM・TV番組の撮影でもよく利用されている。

「いつのまにか60年も過ぎていたっていうぐらいよ。長くやろうと思ってやってきたっていうよりも、気づいたら60年」と笑うのは妻の玲子さん。とはいえ、お二人とも80代。大規模な宴会や団体の宿泊は、体力的に受けられなくなってきたのが正直なところだ。しかし、コロナ禍に激減した宿泊や宴会、囲碁合宿も、最近は復活傾向にあり、まだ休ませてはもらえそうにない。息子さんが跡を継ぐという話もあるそうだ。まだまだ「陣谷温泉」の歴史は続く。

陣谷温泉
神奈川県相模原市緑区吉野1806
JR中央本線藤野駅よりタクシーで約15分。
または、バス「陣馬登山口・和田行き」にて、バス停「陣馬登山口」下車、徒歩30分。
中央自動車道相模湖ICから車で約15分。

TEL:042-687-2363
日帰り入浴:10:00~16:00ごろ/1000円
宿泊:1泊2日(2食付)13200円~
駐車場有り