
清水茶屋
平日登山の強い味方
年中無休の山の灯台「清水茶屋」
原則、年中無休で営業している陣馬山頂の「清水茶屋」。低山は、週末のみ営業する山小屋が多い中、平日の登山客にとって貴重なお店となっている。平日はそれほど混み合わず、広いテラス席がゆったり使えるのも嬉しい。絶景を独り占めする、贅沢な時間が味わえるのだ。

清水茶屋は昭和47年ごろに開業した、陣馬山で一番新しい山小屋である。初代店主の清水辰江さんと2代目店主の清水令宣さんは姉弟で、麓の集落で商店を営んでいた。しかし、近隣にスーパーができるなどして売り上げが減っていく中、山小屋をやらないかという話が持ち上がったそうだ。当時、信玄茶屋と富士見茶屋(現在は休業中)がすでに営業を始めていた。登山客は多く、2軒だけでは対応しきれないこともよくあったそうだ。
「陣馬山は登山客がたくさん来てすごいことになっている、他の人にも営業許可を出したらどうだってことになったみたいで。佐野川村(現相模原市緑区佐野川)でやりたい人がいれば土地を貸しますという話があったので、姉と二人で始めてみることにしたんです」 最初は小さな小屋を建てた。そこから少しずつ拡張し、現在のような立派な小屋とテラスが完成。定番で人気なのは自家製のけんちん汁だ。陣馬そばや陣馬うどん、おでんなどの山小屋らしいメニューも並んでいる。

しかし、やはりなんといっても清水茶屋の特徴は、55年間、年中無休で営業していることに尽きるだろう。
「うちは55年間、大雨や大雪のとき以外は、1日も休んでいないのが最大の特徴。そうしたらそのうち平日もいくらかお客さんが来てくれるようになった。いつもやってますよねってお客さんにも驚かれるよ(笑)」

山頂に山小屋があるかないか。それだけで登山のモチベーションは大きく変わる。清水茶屋が毎日店を開けてくれていることが、登山客の増加にも貢献しているのだ。
「陣馬山はやっぱり景色がいいよね。特に高尾山からの縦走コースは、大都会の近くにはまずない非常にいいコースだと思う。この自然を残していきたいから、登山者にもぜひ山を大事にしてもらいたいなと思います」

現在は、令宣さんの甥の正文さんが3代目店主となった。とはいえ、令宣さんも山を降りることなく、週5日は山に来て、二人で店を切り盛りしている。令宣さんはなんと今年85歳。姿勢は良く、スタスタ歩き、会話も明晰で、とても80代には見えない。
「さすがに忙しい日のあとは腰が痛くなったり、疲れるようになったよ(笑)。今はバイクで上まで来るけど、50年以上、毎日山を登ってきたし、十人十色いろいろな人が来て接客するから、それが健康で長生きする秘訣なのかな」
山頂に行けば必ず清水茶屋が開いている。その楽しみと安心感が、陣馬山登山をより楽しいものにしているのだ。
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清水茶屋
神奈川県相模原市緑区佐野川5(陣馬山山頂)
042-687-2155
営業時間 9:00ごろ~夕方まで
営業日 年中無休