
信玄茶屋
お茶屋から始まり、創業70年
陣馬山を見守り続けてきた「信玄茶屋」
東京近郊にありながら、360℃パノラマの絶景が楽しめる陣馬山。この山頂で、現在営業している2軒の茶屋のうちの1軒が「信玄茶屋」だ。その名の通り風林火山の幟が掲げられている。テラス席から絶景が楽しめるのはもちろん、店舗の奥にある芝生広場は遮るものがない開放感たっぷりの空間になっていて、思わず寝転びたくなる人も多いだろう。
信玄茶屋ができたのは昭和30年ごろ。2代目店主の栄一郎さんの母、小池トキさんが避難小屋の管理も兼ねて始めたことがきっかけだった。最初は避難小屋に隣接してカウンターをつくり、飲み物を販売していたそうだ。
「お水を背負っていって、薪でお湯を沸かして、お茶を売りました。いわゆるお茶屋さんですね。やかんの大きさもいろいろあって、人数に合わせたサイズのやかんをそのまま、人数分の湯呑みとセットにして渡していたんです」と栄一郎さん。なんとも風情のある光景だ。昭和40年代に入ると、うどんやそば、味噌汁などの軽食も提供するようになった。当時は労働組合のレクリエーションや学校遠足などの団体客も多く、大忙しだったそうだ。
栄一郎さんは平日は会社勤めをしながら、休日は荷上げを手伝っていた。退職後に夫婦で経営を引き継ぎ、現在は土日祝に開店している。ハイシーズンである春と秋は特に混み合うが、10年ほど前の登山ブームを契機に、近年は1年じゅう登山客がいるようになり、忙しい日々が続いている。
人気メニューは山菜そばや味噌汁。夏は冷たいそばも人気だという。「以前はうどんが人気だったんですが、最近は圧倒的にそばを頼む方が多いですね。みなさん、非常食も兼ねておにぎりなどをもってきていて、こちらで温かい汁物をプラスするという形でご利用してくださることが増えたんです」と栄一郎さん。
「荷上げはきついし、天候にも左右されるし、山小屋の経営は大変なことが多いです。でも、会社勤めをしていたときと違うのは、ストレスがまったくないこと。お客さんもいろいろな人が来るので、話をするのも楽しいですね」
まもなく77歳になるという栄一郎さんだが、年齢を感じさせないパワフルさがあり、明るくポジティブ。まだ当分は山小屋を続けていきたいと話す。毎月の営業日は、ウェブサイトでお知らせしている。ひと汗掻いたあとに待っている一服を楽しみに、陣馬山に足を運んでみてほしい。
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信玄茶屋
神奈川県相模原市緑区佐野川5(陣馬山山頂)
042-687-2235
営業時間 9:00ごろ~夕方まで
営業日 土日祝(雨天は休み)
※ ウェブサイトのブログで、毎月の営業日をアップしています
https://littletree.jp/shingen-chaya/